【美容と健康】究極の地産地消から生まれる根室の味わい。凝縮された旨みを骨まで味わう。
根室海峡でしかとれない北海道の魚
「東蝦夷方言コマイ、唐太方言ハンクワイ/肉白くして大サ五、六寸位、初夏より秋までとる成」。これは、幕末の探検家・松浦武四郎が「納沙布日誌」に記した、氷下魚(コマイ)についての一文です。唐太というのはカラフト=サハリンのことで、ハンクワイはおそらくカンカイ(氷下魚の別名)のことだと思われます。着色図付きで、北海道では身近なこの魚について解説しています。

氷の下に網を仕掛けて獲るから氷下魚?
武四郎は初夏から夏が漁期と記していますが、1〜3月の冬の産卵期が最盛期で、この時期に獲れる氷下魚は味が良いとされます。国内でも、氷下魚はほぼ根室海峡・野付半島付近でしか獲れない北海道の魚です。海域で行われる漁のほか、根室の風連湖や温根沼などの汽水湖にいる氷下魚を、凍結した氷に穴を開けて定置網を仕掛けて獲る「氷下待ち網漁」は、地域の季節の風物詩にもなっています。また、この漁のようすから「氷下魚」という当て字がなされたという説が有力です。
氷下魚と書くのも道産子にとっては当たり前ですが、道外のニュースで〝コオリシタギョ〟などと読まれてしまうことが、今もあるとかないとか。

氷下魚はタラ科の魚で、冬の道東の味覚であるマダラやスケトウダラよりも小型ですが、少し特異な特徴を持っています。血液中に凍結を防ぐ物質が含まれており、真水なら凍結する0度以下の環境でも生息できるという性質があります。この仕組みには特殊なタンパク質が関係しているといわれます。

コマイ、ゴタッペ、オオマイ。大きさで変わる名前
氷下魚は、マダラ同様、足が早い(鮮度が落ちるのが早い)ことから、根室近郊以外では滅多に生では食べられませんが、淡白でくせのない白身なので、塩焼きからフライ、鍋物まで、どんな調理法にもよく合います。産地以外では一夜干しや干物として流通し、お酒のアテのほか、おやつとしても親しまれています。
氷下魚というのは、25cmほどまでの魚体の呼び名で、それより小さいものをゴタッペ、25cm以上をオオマイと呼び分ける地域もあります。まるで凍っているかのようにカチカチに干した氷下魚を、ビール瓶などで叩いてほぐして食べていたのは、多くは魚体の大きなオオマイだったようです。

タンパク質、カルシウムを多く含む健康おつまみ
鮮度の問題から、なかなか生では食べられない氷下魚ですが、干物にすると旨みがより凝縮されます。白身魚でありながら脂が多く、良質なタンパク質やカルシウムを豊富に含むなど、栄養価が高いことも特徴です。なかでも歯や骨を丈夫にするカルシウムは、心疾患の予防や高血圧の抑制、イライラの解消にも効果があるとされ、幅広い年齢層にうってつけの食材と言えそうです。
また、エネルギーとなるグルタミン酸、身体の調節に役立つグリシンなどのアミノ酸、皮膚粘膜の維持などに効果が知られるビタミンAなども多く含まれています。健康なおつまみとして、罪悪感なく食べられそうです。ただ、一つ欠点があるとすれば、おいしくてつい、お酒が進み過ぎることかもしれません。

小型の魚体を使用、骨まで食べられる氷下魚
氷下魚を完全に乾燥させた丸干しや、一夜干しにした生干しが商品として流通しており、なかでも丸干しは北海道内の多くのスーパーで見かける定番品です。その多くは産地である根室などで製造されており、数々のメーカーが操業しています。そんな“氷下魚銀座”ともいえる根室市で、丸仁が手がける『まるかじり氷下魚』は、商品名の通り、骨までまるごと食べられる手軽な一品です。
商品にならないからと、かつては加工工場のスタッフに持ち帰ってもらっていたという小さな氷下魚を、ある時丸干しにしてみたところ、上質な味わいに仕上がったことから商品化を検討。どのくらいの大きさの魚体なら、干して食べた際に骨が気にならないか、といった細かな検討を重ね、商品化に辿り着きました。製造単位ごとに試食を行い、氷下魚の状態をはじめ、その時々の条件に応じて味付けを細かく調整しながら、安定した美味しさを常に追求しています。

自ら獲って加工する氷下魚も準備中!
丸仁の代表である中村尚仁さんは、根室市の歯舞漁協で競り人の資格を持ち、原材料となる氷下魚はほぼ100%、水揚げされたばかりのものを自ら仕入れて使用しています。また、同漁協の組合員として昆布漁にも従事しており、漁師でありながら製造メーカーとして商品づくりにも取り組んでいます。さらに、このほど氷下魚漁の許可を得て出漁の準備を進めており、2026年秋以降には、自ら漁獲した氷下魚も原材料に加わる予定だといいます。

地元ならではの魚を、自ら船を出して獲り、さらに自分たちで加工して商品に仕立てる。氷下魚を干し、その旨みを引き出すのは、地元・根室の寒風です。究極の地産地消が生み出す氷下魚の深い旨みを、ぜひご賞味ください。
