【女性経営者】DO3TABLEを支える女性のチカラ。歴史ある味噌を、現代につないでいく

服部醸造株式会社
代表取締役 服部由美子さん

渡島半島の中央に位置する二海郡八雲町。木彫り熊発祥の地として近年脚光を浴びるこのまちで、100年にわたって味噌・醤油づくりを続ける服部醸造。尾張徳川家とともにこの地の開拓にあたったことをルーツとし、現在は米・大豆・海洋深層水など〝オール八雲〟の原材料にこだわって製造を行っています。令和に入り、急遽歴史ある〝味噌屋〟を切り盛りすることになった服部由美子社長に、同社の成り立ちと思いを伺いました。

—— 2027年に創業100年を迎えますが、ルーツは明治期なのですね。

私たちが暮らし、味噌づくりを行っている道南の八雲町は、明治11(1878)年に、徳川御三家のひとつである尾張藩の旧臣が、北海道開拓のために入植したことを機に発展してきました。その際、尾張藩に代々仕えていた服部家の祖先も、一緒に船に乗ってこの地に渡ってきています。

初代・伝次は商売に長けていたようで、でんぷん工場などを経営した後、昭和2(1927)年に味噌づくりを始めます。それが当社の創業になります。八雲の名前は、古事記の「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」が由来で、1週間に8日曇ると言われるほど、曇りの日が多いんですね。日本海と太平洋に面し、海霧が発生しやすいせいですが、低温多湿の気候は味噌の製造に適している、ということもあったようです。

—— 服部醸造の屋号「まるはち(〇に八)」は、徳川家に由来しているのだとか。

伝次は尾張徳川第19代当主・徳川義親氏に懇意にしていただき、味噌屋として商売を始める際に、尾張八郡を表す尾張藩の印「まるはち(〇に八)」を商標として下賜されました。以来、徳川家の支援や、ともに開拓に入った方々の末裔との親交のもと、「マルハチさん」の愛称とともに商売を続けてこられています。

味噌や醤油は、生きるうえで欠かせない食品です。開拓を進めるうえでも、厳しい生活のなかでまず確保すべきものでした。そのため、かつて八雲には多くの味噌・醤油屋がありましたが、現在は私たちが残るのみです。その意味で、八雲の歴史の一端を担っているという自負と責任を感じています。

—— 近年は、どのような味噌づくりを行ってきていますか。

「OK味噌」という商品名はご存知でしょうか。近年まで北海道新聞の題字下広告(新聞のタイトル下のスペース)に継続的に掲載していました。味噌らしくない商品名ですが、これはアメリカから戻ってきた義父が名付けたものです。海外でも通用する“いい味噌”をつくりたいという思いから、占い師まで呼んで三日三晩悩んだものの決まらず、どうしようかとなった時に、「いい味噌の“いい”は英語でOKだ」と。冗談のようですが、本当の話です。

その後、主人が経営を引き継いでからも「OK味噌」は看板商品でした。スーパーでは常に目玉商品。ただ、それは薄利多売で数を出していたからです。とにかく売れましたが、義父が丹精して生み出した味噌が安売りの対象になるのは寂しい。そこで主人がスーパーや量販店を訪ね、「申し訳ないのですが、もう安売りはいたしません」とお伝えしました。しばらくは売上面でも大変でしたが、そのお陰で今の服部醸造があるのだと実感しています。その主人も令和2(2020)年に突然亡くなり、今は私が引き継いでいます。

—— 事業を引き継ぐには、決心が必要だったのではないですか。

亡くなったのが11月だったので、年末に向けての段取りや賞与の準備など、次から次へとやらなければならないことがあり、娘(現・常務)と二人で必死でした。亡き社長を思って涙ぐむ社員に感謝しつつ、動揺を与えてはいけないという思い、そして開拓期から続く服部醸造の歴史を途切れさせてはならないという意識が強くありました。

夫が加療中、同じ病院に入院していた90歳近いおばあちゃんから「嫁に来てからずっと服部醸造の味噌を食べてきたし、最期まで食べられそうでよかった」と声をかけていただいて。味噌はご馳走ではありませんが、家の味というか、生活に欠かせないものになっている。うちの味噌がそんな存在であることがうれしく、ありがたいという気持ちが決心につながりました。

—— 味噌づくりに関して、〝オール八雲〟とおっしゃっていますね。

安売りをしていた時代は、米も大豆も安価な輸入品を使っていましたが、それを一切やめ、地元の原材料へ切り替えています。平成17(2005)年に旧熊石町と合併し、食資源が多様になりました。八雲のスキー場に立つと、海が見えて、田んぼがあって、畑もある。これで味噌が作れるじゃないか、と。熊石沖の水深300m以深の海洋深層水を使った味噌もラインアップしています。

パッケージは、葵の御紋と「まるはち(〇に八)」の商標。伝統を誇りにつくりあげた味噌も、当初はあまり売れ行きがよくありませんでした。廉価で販売していた「OK味噌」のイメージが強かったんですね。それでも品質、なにより味のよさをご理解いただけるようになり、学校給食や病院などでも使っていただけるようになりました。

—— お湯を注ぐだけの「HOKKAIDO MISO SOUP」など商品展開もユニークです。

「HOKKAIDO MISO SOUP」は、食生活が変化するなかで手軽に味噌を食べてほしいという思いから開発した、お湯を注ぐだけでみそ汁ができる商品です。また、DO3TABLEで販売している「ぎゅっとにんにく醤油」や「とろ〜りうにソース」など、醤油ベースの商品づくりにも取り組んできました。

—— 「とろ〜りうにソース」は、どのような経緯で?

奥尻の知り合いから、規格外のウニが大量に余っていると聞いたことがきっかけでした。その活用について話すなかで、奥尻ワイナリーのワインを使った醤油ベースの商品ができあがったのが最初です。とろみをつけて濃厚に仕上げ、まさにソースとして使えるようにしました。現在は奥尻産ウニのほか、道産ウニも使用しています。

オール八雲ではありませんが、当社では北海道産の原材料にこだわっており、ウニもその一つです。生のウニは常温では持ち帰れませんが、うにソースなら持ち帰ることができます。一方、商品としては生ウニを使っているので、香りがすごくいい。文字通り手前味噌ですが、自慢できる商品の一つです。

—— 創業100年の服部醸造、どんな展開を考えていますか。

経営を引き継いで時間が経つなかで、これまでの信頼を大切にしつつも、そこに甘えることなく、常務をはじめ若い世代の発想も生かしながら、新たな商品開発に取り組んでいきたいと思っています。同時に、子どもや孫に食べさせるという母親の目線で、おいしくて安全な味噌や醤油を、これからも基本にしていきたいですね。

経営者として、そうした視点は甘いのかもしれませんし、原材料としての販路拡大も必要だと考えています。ただ、基本は家庭で食べるものという思いを大切にし、やさしさというか、柔らかな心をもって、いつまでも懐かしい味として残っていく商品を提供できればうれしいですね。

—— 本日は、ありがとうございました

服部醸造㈱のDO3TABLE商品

北海道産うに使用 とろ~りうにソース

服部醸造自慢の本醸造醤油をベースに、北海道産のうにと奥尻産ワインを贅沢に使用した、香り高く濃厚な味わいのソースです。

商品を詳しく見る

北海道産にんにく使用 ぎゅっとにんにく醤油

北海道産の乾燥にんにくに、自慢の本醸造醤油をじっくり染み込ませ、香りと旨みを引き出した風味豊かなにんにく醤油です。

商品を詳しく見る