【女性経営者】DO3TABLEを支える女性のチカラ。一つひとつ炊く、小さな鍋に思いを込めて
有限会社タカハシ食品
専務取締役 高橋京子さん
津軽海峡を間近に臨む工場で、にしんの甘露煮やにしん・さけの昆布巻き、鱈子と昆布の旨煮、たこやわらか煮、根昆布佃煮などの惣菜づくりを手がけるタカハシ食品。北海道産や道南で獲れた原料を中心に、国産素材を使用し、醤油・砂糖・本みりんで味つけした小鍋炊きの独自製法で、本州の料亭などでも高い評価を得ています。今回は、同社のルーツと製品づくりにかける想いについて、ご主人の高橋誠社長とともに会社を切り盛りする高橋京子専務にお話を伺いました。



—— 創業から41年目になりますが、その前身があるそうですね。
私たちが佃煮づくりを始めた1985年を創業年としていますが、そのルーツは、父が函館で営んでいた水産品の一次加工にあります。にしんを下処理してつくる本乾(身欠にしん)や、昆布巻き用の簀巻きなどを製造し、主に大阪方面へ味付け用の素材として出荷していました。
私は直接その仕事に携わったわけではありませんが、父が懇意にしていた大阪の業者さんを紹介してもらい、当時まだ20代だった私と主人が現地まで出向いて見せていただいた佃煮のつくり方が、今も変わらず、私たちの製法として受け継いでいます。

—— お父さまはもともと、函館の方だったのですか。
いえ、父の出身は和歌山県です。戦後、弟・妹とともに満州から引き上げ、北海道を新天地としてやって来ました。漁業関連をはじめ、さまざまな仕事を経て、「ヤマキュウ 古田商店」という名義で身欠にしんの加工などを始めています。ちなみに父は昭和ひと桁生まれで、根性だけは誰にも負けない人でした。
だからといって、私も水産加工を……と思ったわけではありません。商売の大変さを子どもながらに見ていたので、むしろ「絶対にやりたくない」と感じていたほどです。夫と結婚していなければ、今の仕事はしていなかったでしょうし、この会社も存在していなかったと思います。

—— では、ご主人が、タカハシ食品を創業したのですね?
主人はもともと別の仕事をしていましたが、「自分も水産の仕事をしてみたい」と起業しました。北海道大学の水産学部出身で、水産には以前から関心がありましたし、結婚した相手の実家が水産関連。それで刺激されたんですね、きっと(笑)。

当時、私たちは東京の借家で暮らしていましたが、大家さんに許可を得て、その敷地内にプレハブの小さな工場を建てました。はじめは父と同じように、一次製品からのスタートです。やがて味付きの商品を求められるようになり、大阪で学んだ「直火釜炊き製法」で佃煮の製造を始めました。当初は、父の会社の東京営業所というかたちで仕事をしていました。ちなみに、屋号の「ヤマキュウ」は今も引き継いでいます。
—— 「直火釜炊き製法」とは?
直径約60センチ・容量20リットルの小鍋を使い直火で炊き上げる、料亭などでも用いられる本格的な製法です。材料はあらかじめ下ゆでして雑味を抜き、ていねいにアクを取りながら、ひと鍋ひと鍋、心を込めて炊き上げます。炊き上がったら、そのまま冷蔵庫で一晩寝かせ、味に深みを持たせています。

味付けは創業当時から変わらず、醤油・砂糖・本みりんの三つだけ。どこか懐かしい、家庭的な味わいです。うま味調味料に頼らず、製品ごとに継ぎ足して使うタレには、素材本来の旨味がぎゅっと凝縮されています。工場では、直径約60センチの小鍋がずらりと並び、それぞれの鍋でコトコトと炊き上げています。一度に大量生産はできませんが、手間を惜しまず、素材のうまみをしっかりと引き出せる製法です。その分、多品種への対応にも柔軟に取り組むことができ、現在は平均して30〜40種類の佃煮などを製造しています。

—— 原料には、どのようなこだわりがありますか。
17年前に私の故郷・函館に戻り、現在の工場は2カ所目になります。この地域、そして北海道内の原料問屋さんと日頃から直接やりとりできることは、大きな強みだと感じています。
原料は、できる限り道南、さらには渡島・檜山産のものを優先し、北海道産や国産の素材を基本に選んでいます。看板商品の「にしん甘露煮」に使うにしんは北海道産のほかにロシアからも仕入れていますが、昆布巻きに使うさけや昆布、ホタテ、たらなどは、いずれも北海道産です。

ただし、原料そのものを一から開発することは、ほとんどありません。というのも、商品化するには、ある程度安定した供給が見込めることが前提となるからです。通常は、原料問屋さんからまとまった数量の素材をご提案いただき、それをもとに製品化の可否を検討したうえで仕入れる——そんな流れで新しい商品が生まれています。最近では、毛つぶ(アヤボラ)をご提案いただき、製品化を目指しているところです。
—— そうすると、商品展開は原料ありきというわけですか。
水産物については、そうした事情が大きく影響しますが、現在は農産物の加工にも取り組んでいます。すでに、きんぴらごぼうの製造を始めており、大豆を使った製品づくりも進行中です。にしんとたけのこなど、水産物と組み合わせた商品も考えられます。近年、北海道でも生産が始まり、品質の向上が著しいさつまいもを使った惣菜やおやつも、今後の展開として魅力的です。また現在は、たこ飯などの炊き込みご飯の素を試作中で、「佃煮屋の炊き込みご飯」としてアピールしていければと考えています。

—— 商品の販売拡大などについては?
私たちは、もともと東京で事業を始めたこともあり、現在では取引の8割以上が道外のお客様とのものです。通販や宅配サービスのカタログ販売での売上も大きく、数年前からは道内のコンビニチェーンにも商品が並ぶようになりました。さらに、13〜14年前からは海外展開も視野に入れ、JETRO(日本貿易振興機構)の商談会に参加しながら可能性を探ってきました。そうした中で、スペインに進出している東京の老舗鰹節店の代表とのご縁が生まれ、現在は同国での製造・販売のトライアルを始めたところです。
—— 海外進出もうかがうタカハシ食品の思いをお聞かせください。
生まれたばかりの長男を背負い、一つの鍋を炊くところから始まった40年。大変なこともありましたが、手前味噌ながら、商品が良いからこそ続けてこられたのだと思います。そしてそれはひとえに、手間のかかる小さな鍋で、従業員がていねいにものづくりに取り組んできてくれたおかげだと、感謝しています。
背中にいた息子も、今では会社の舵取りに加わるようになりました。新しい感覚でチャレンジを重ねながらも、「パックには私たちの思いも込めて」という、創業以来の姿勢を、これからも大切に守っていきたいと思っています。

—— 本日は、ありがとうございました。
㈲タカハシ食品のDO3TABLE商品
北海道産 鱈子と昆布の旨煮
北海道産の真鱈の卵の皮を手作業でていねいに剥き取り、真鱈子本来の旨味とプチプチとした食感を堪能できるように仕上げました。

北海道産 たこやわらか煮
味が濃いと評判の北海道産のたこを、一口サイズにカットし、柔らかくなるまでじっくりと炊き上げました。
