【女性経営者】DO3TABLEを支える女性のチカラ。放牧酪農の経験を生かし、事業承継の味を守る

ニセコ リン・リンファーム
鈴木 塁 さん

濃厚なチーズの味わいと香り、カリカリの小気味良い食感。ニセコのお土産として知られ、人気商品だった「クリスピーチーズ」の製造を事業承継し、原材料・製法ともそのままにブランドを守り続けるニセコ リン・リンファーム。簡易な牛舎と5頭の乳牛で、放牧酪農という希少な形態で新規就農した同牧場のようす、酪農にかける思いと、商品展開を見据えた今後の取り組みについて、ご主人とともに運営にあたる鈴木塁さんに伺いました。

—— 『ニセコ リン・リンファーム』は、開場して5年目という新しい牧場ですね。

2021(令和3)年に立ち上げた牧場です。もう少し正確に言うと、主人がどうしても「やりたい!」と、新規参入して始めた牧場なんです。当初、私は反対でした。彼はある程度、経験がありましたが、私は牧場で働いた経験もなかったからです。それだけならまだしも、3人の子どもたちのことを考えると、冒険はできないと……。

—— 差し支えなければ、ご主人との出会いは?

同じ町内にある某牧場さんの菓子製造部門に私が勤務していた時、ふらりと彼が現れて牧場で働き始めたんです。東京出身の主人は、日本の良さを知りたい(という理由だったと思いますが……)と、鹿児島県の屋久島で縄文杉を見ることをゴールに、一旦、北上して北海道にやってきています。そして南下する前に少し働く、ということでやってきたんですね。そこで、出会いがあったというわけです(笑)。

—— ユニークなご主人、そして劇的な巡り合いですが、そこから牧場開場に至る経緯は?

主人は新規就農をしようと思ってはいなかったようですが、酪農に興味が湧き、もう少し学びたいと、ようてい農業協同組合の「JAようてい酪農ヘルパー(*)利用組合」に転職。羊蹄山麓の酪農家を回るなかで、放牧酪農と出会い、魅力を感じたのだそうです。畑作農家さんから傾斜地を借り、安価なパイプハウスを建て、5頭の牛を飼うというスタイルで牧場を立ち上げてしまいました。
(*酪農ヘルパー:休みのない酪農家の牧場に入って、搾乳を始めとする作業を行う仕事)

—— 5頭! それだけの規模で、経営的には……

私も、そこが心配な点でしたが、酪農ヘルパーの仕事は続け、一定の収入を得ながら自分の牧場をみる、ということで、それならば、と漕ぎ出したというわけです。2年間は、兼業でやっていました。いわゆる6次化を目指し、独自のビジネスモデルをつくる、というのが最終的な目標で、放牧によるグラスフェッド・ミルクなど付加価値の高い生乳で製品を提供したいと。その一つとして、当初からソフトクリームの製造を目指しています。

—— 本題の『ニセコでつくったクリスピーチーズ』がなかなか話に出て来ないのですが(笑)、この商品も6次化の一つなのですか?

私たちの牧場が考える6次化とは違いますが、6次化の第一弾として考えているソフトクリームが、この商品を手がけるきっかけとなっています。ソフトクリームについて学んでいた時、主人が放牧酪農を知るきっかけとなった酪農家さんから、ソフトクリーム製造機を一式、譲りたいと言っている人がいる、という話がありました。それが、ニセコアンヌプリの麓でチーズを製造している「ニセコフロマージュ」代表の関規明さんだったんです。手づくりチーズとソフトクリームで人気の店でしたが、事業縮小を計画するなか、不要になった製造機を譲ってくれると。まさに願ったり、叶ったりで、その件でご挨拶にうかがった際、「ソフトクリームもいいけれど、クリスピーチーズをやらない?」とお話をいただいて。それまで頭の中はずっとソフトクリームでいっぱいでしたが、そのひと言でスイッチが切り替わり「やります!」と即答していました。

—— ニセコフロマージュの「クリスピーチーズ」といえば、地域を代表する人気商品でした

そうなんです! もちろん私も知っていましたし、大好きでした。多くのファンも持つこの商品を手がけられるなんてと、私たち自身が驚いたほどです。設備一式を受け継ぎ、製法を教えていただいてそれを忠実に守り、ゴーダチーズをカリカリに焼き上げた、独特の濃厚な味わいと食感という以前と変わらない製品をつくっています。使用する道産の生乳も、従来と同じものを使用。その意味で、私たちの6次化商品ではなく、変わらないニセコの味を提供しつつ、牧場を支える代表商品という位置付けです。

—— 従前と変わらない味わいということですが、商品としての販路なども同じですか?

これまでの取引先(販売先)も受け継ぎつつ、さらに多くの方々に知ってほしいと考えています。その一つが、DO3TABLEでの販売ですが、百貨店のバイヤーなどの反応も知りたいと考え、「buyer’s room 2024」に応募しました。これは、中小企業・小規模事業者などの販路開拓の支援を目的に、商品の審査とビジネスマッチングを行う全国商工会連合会主催のイベントで、経済産業省・中小企業庁が後援しています。誰か1人でも、クリスピーチーズに興味を持ってもらえれば、という思いで参加したのですが、なんと、応募のあった104商品のなかで経済産業省大臣賞、金賞、審査員特別賞の三冠を受賞! 商品の品質と同時に、事業承継で地域の価値を守るという点にも評価をいただきました。

—— それは、すごいですね。そうなると、生産量の拡大なども視野に入ってきますね。

既存の取引先への出荷も増え、生産量は製造を引き継いだ頃の1.5倍ほどに拡大しています。クリスピーチーズの製造は、私1人ですべて行っているため、現状の規模では手一杯で、新規の取引はお断りさせていただいているんです。人を入れて生産量を増やすことは可能ですが、自分の目の届く範囲でつくることで、従前からの品質を保ちたいと思っていて。チーズを焼いて、それを割って、袋詰めするところまですべて手作業で、一つひとつていねいにつくっています。

—— 牧場としての、今後の展開などをお聞かせください。。

ソフトクリームの計画を進めつつ、それ以外の商品づくりができないか、とも思い始めています。定期的に札幌のデパ地下などをのぞき、お菓子のトレンドなどに触れているほか、牧場体験に訪れる高校生に好きなもの、流行っているもの等を聞いて勉強しているんです。これは、放牧酪農に取り組んでいるからこそできるマーケティングですし、自前の生乳ではないものの、牛のことを知る自分たちがクリスピーチーズをつくることにも、意味があるのではないかと最近、感じているところです。

—— 本日は、ありがとうございました

ニセコ リン・リンファームのDO3TABLE商品

北海道産生乳使用 ニセコでつくったクリスピーチーズ  プレーン

北海道産の新鮮な生乳から作られたナチュラルチーズを、絶妙な焼き加減でカリッと香ばしく仕上げました。

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北海道産生乳使用 ニセコでつくったクリスピーチーズ ペッパー

ブラックペッパーを効かせることで、スパイシーで奥深い”大人の味わい”に仕上げました。

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