【女性経営者】DO3TABLEを支える女性のチカラ。調味液まで手づくりし、道産素材の味を引き出す
株式会社NSニッセイ
代表取締役 松田さゆりさん
昆布巻き、おさしみつぶ、山漬け新巻鮭、各種燻製をはじめ、北海道産・国産の鮭・魚卵・貝・えび・かに・いか・たこ・さんま・ししゃも・昆布を使った調味加工品づくりを手がけるNSニッセイ。100アイテムにものぼる水産加工品に加え、農産品の加工にも実績をもつ同社の製品づくりへの想いと、SDGｓにもつながる加工へのこだわりについて、2代目として舵取りを担う松田さゆり社長に伺いました。
—— 1988年に事業をスタートし、38年目を迎えますが、創業の経緯をお教えください。
NSニッセイは、積丹半島東部の古平町で漁協職員をしていた先代（父）が立ち上げた会社です。当初は港に揚がる魚の卸売や、一次加工から始まりましたが、200海里問題以降、遠洋漁業が減少するなか、大切な水産資源に付加価値をつけようと調味加工品製造を本格化させていきます。2001年にはレトルト加工の設備を導入し、昆布巻や常温加工品の製造に力を入れ、現在に至ります。
—— 調味加工品の製造にあたって、こだわっていること、また、強みはどんなところでしょうか。
まず一つ目が北海道産の厳選した原材料を使うこと。近海で手に入らないものはなるべく国産にこだわります。
二つ目は、調味液へのこだわり。当社では、創業以来、化学調味料・保存料は使用せず、ほとんどの製品の調味液は自社で調合しています。素材本来の美味しさを感じられる食品を造るためです。その調味料もひとつひとつ、こだわりがあり天日塩を沖縄の海水で煮詰めてつくる真塩、さとうきび100%でつくる素精糖、遺伝子組み換えでない菜種を使ったなたね油など、吟味したものだけを取り入れています。さらに自社開発の魚醤油をうまみ調味料として使用しているところも特徴です。
三つ目が加工技術。40年余りにわたって培ってきた魚の処理方法。仕上がりの品質とともに、歩留まりよく原料をムダにしない製法はフードロスにもつながっていると思います。
—— そうしたこだわりを、変わらずに続けられているのは、なぜでしょうか。
先代の頃から変わらずに。道産・国産へこだわり、化学調味料・保存料を使用しない安全なものを、という当社の姿勢を理解して頂けているお得意先様の存在が大きいです。
—— 松田社長が2代目として会社を継いだのが2016年。どのような思いで入社しましたか。
正直、社長を務めるなどということは、考えてもいませんでした。私は医療関係で働いていたんです。それが、忙しいから手伝ってくれと。それならと、仕事に役立ちそうな大型自動車免許を取得したことが運の尽きでした（笑）。2年間ほどは、早朝から配送トラックのハンドルを握り、札幌や地方へ商品を運ぶ日々……。これも何年間かの辛抱、落ち着いたらまた別の仕事をするつもりでしたので、当時はそのまま当社で続けるとは、思っていなかったですね。
—— それでも結局、仕事を続けることに……
創業5年ほどで自社工場を建設し事業規模が大きくなり、本当に忙しかったですし親の会社ですしなかなか辞めるとは言いだしづらくて（笑）。年末など工場は夜遅くまで稼働。膨大な事務処理に追われる日々。(当時は手書きだったので)
倍以上に増えていく社員の管理に奮闘したり。当時、水産加工会社では後発の会社だったので先代をはじめ従業員みんなで「なんとか乗り切ろう！」と頑張った時代。
今思うとあの頃懸命に働いた経験が今、少々の事にも動じずになんとか落ち着いて対応することができているのではないかと思います。社長として現場をまとめなければいけない時にもとても役立っていますね。
—— 社長となって考えたこと、また、思っていることをお聞かせください。
先代はいい意味でトップダウン。社長が決めたことに現場が応えていくというスタイルでした。そしてまた父は加工技術者でもありました。一方、私は現場のことがよくわからない。そのため、従業員の話を聞かなければ判断できないといった部分がありました。そこで、とにかく現場から声をだしてもらえるような雰囲気づくりを心がけ、どうしたら安全で効率の良い製造ができるかを従業員の方々とたくさん話し合いました。
最初は黙っている人も多くそれならと書面でのアンケートも行いました。ベテランの方を中心に少しずつ意見がでてくるようになり、今では従業員が製造側の視点で細かな改善点を考えてくれるようになりました。試行錯誤ですがひとつひとつ形になってきているのも従業員の方々のおかげだと思っています。
—— ところで、工場内では廃油からつくられた石鹸を使っていますね。
廃油を利用してつくられた無添加の粉石鹸を、工場全体の清掃から手洗いにも使っています。これは、長く漁協で働いた先代が、海をなるべく汚したくないという思いで始めたものです。私が社長になり、社外の方々と接する機会が増えるなか、30年以上も前から〝この石鹸を利用していることはSDGs！ぜひ、アピールすべきことです〟と言われるようになりました。ずっとこれが普通だったのでまったく気づきませんでしたが（笑）。
—— 最後に、今後の商品開発について、お教えください。
一昨年にレトルト加工設備を増強し常温品のラインナップ拡大に力を入れています。日本全国で豪雨や地震といった自然災害が増える傾向にあるなかレトルト商品のバリエーションは限られ、中でも常温で保存できる魚の加工品は少数。その点で弊社の素材の味を活かした天然調味は飽きることなくお肉が苦手な方にも喜ばれるのではないかと思います。
化学調味料・保存料不使用をモットーに子供からお年寄りまで安全で安心して食べられる食品を提供し続けていきたいです。
—— 本日は、ありがとうございました。
㈱NSニッセイのDO3TABLE商品
北海道産 やわらか炊き昆布巻き 鱈子
昆布はみついし昆布を使用。昆布巻の巻き作業は、すべて手作業で1本1本ていねいに行っています。
ほたてのコンフィ オリーブオイル煮
北海道産のほたてを原料に、良質なオリーブオイルとなたね油でやわらかく煮込みました。
